活動・事業内容

魅力ある業界づくりに向けて

昨今の社会経済情勢に思いを巡らせるとき、一昨年来のコロナ禍で国民が疲弊している中、ロシアによるウクライナへの軍事進攻で原油価格が高騰、ガソリンの価格や二次製品の値上げも大きくなった。ロシアへの経済制裁で貿易が滞り、建設資材(特に建材用の木材)が直近価格の2倍以上と跳ね上がった。FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)の主要政策金利の引き上げによる円安で輸入物価の高騰により食料品、電気やガス料金の値上げも顕著になった。

ここからは、項目ごとに考察していく。


建設業の現状
建設業の投資額は1992年の84兆円をピークにバブル経済が崩壊して「失われた20年」に突入した。2008年に世界経済事件ともいえるリーマンショックが発生して2011年に建設投資額はピーク時の半分の42兆円となった。しかし、2013年頃から長期経済成長が始まって、以降60兆円を推移している。
建設業の業者数(許可業者数)は1999年に約601,000社あったが、2018年には22%減の約468,000社となった。
また建設業の就業者数も1997年の約685万人から2018年には約503万人へと27%のマイナスになった。


建設業の下請構造
建設の仕事は、現場や規模も内容も異なり1件ごとの単品受注生産であり、生産性が上げにくいのが特徴といえる。さらに、
 1)工事によって必要となる職種が異なる
 2)工事が発注者の動向と経済状況に左右される
 3)建設業者は最大の工事量を前提として労働力と機械を保有しなければならない
という特徴がある。
また、日本の企業は中小企業が多いという特徴があるが、なかでも建設業は規模が小さい事業所が特に多く存在している。そのため、2次下請け3次下請けは当たり前。4次、5次の仕事を請け負っているところもあると言う。
この重層下請構造は大企業にも中小、零細企業にもデメリットをもたらす。重層下請になればなるほど安全管理が行き届かず重大災害を引き起こした事例もある。
何よりも小規模の事業者は力が弱く、不利な条件で取引を引き受けなければならないこともあり薄利に陥る場合がある。

つぎに、建設業が抱える問題について考える。


人材不足
建設就業者はピークだった1997年以降減少傾向にあり、現在では、60歳以上が約25%であるのに対し、10~20代は約10%である。2、3年はしのげたとしても、今後10年間で大半が引退するとみられ2025年時点で技能労働者が47万人~93万人不足すると想定されている。
全産業のなかで、建設業が一番「人手不足」を感じている。建設業に次いで運輸業、飲食サービス業と続く。これが実情である。


長時間労働
2018年度の建設業界の年間労働時間は2,036時間で、これは全産業平均より300時間も長い。このあおりで休日数も少なくなっていて、完全週休2日(4週8休)は、建設業界で約10%、週休1日(4週4休)以下は約40%にも上る。
人手が不足すると労働時間が長くなり、長時間労働が慢性化するとそれを嫌う労働者が増えるので人手の確保がさらに難しくなるという悪循環に陥る。

労働者の高齢化と若い担い手不足が特に問題になっている。それは、先のアンケート結果にも顕著に現れており、特に若年労働者の確保は我々の業界にとって喫緊の最重要課題と捉えている。



このような中で、建設業の「3K」「きつい・汚い・危険」という悪いイメージから、業界全体として新たに「新3K」を掲げて新しい取り組みを始めた。新3Kとは、「給与・休暇・希望」のことを指しており、これらを実現させることが人手不足解消の第一歩であることを示している。

我々は、この人材不足という難題に対して、具体的に施策を展開し実行していくことで、この難局を乗り切ることが肝要である。
個々の取り組みではなかなか達成出来なかったことも、京都の管工事業界全体が強い意志を持って行動していくことが大事である。

そこで、「脱!今だけ、金だけ、自分だけ」を合言葉に、組合員各位の総力を結集し、知恵と行動でこの難局を乗り切り、永続できるとともに魅力ある業界となるよう実行する。

ここに、
京都の水道屋の連帯力と底力を発揮し、嵐を起こそうではありませんか。


令和4年10月                       
京都府管工事工業協同組合 理事長